子育てと翻訳業を両立!

藤井美佳さんの仕事術

Special Interview

人気の動画配信サイトHulu(フール―)2019年9月から配信を開始した、日本初上陸のインドドラマ『ポロス~古代インド英雄伝~』。全299話、総製作費はなんと81億円とそのスケールの大きさでも話題となっています。

働くママ プラスでは、本作の日本初上陸を記念し、『ポロス~古代インド英雄伝~』の字幕翻訳を手掛け、小学生の娘を持つ働くママ・藤井美佳さんにインタビューをおこないました。

藤井さんは、大ヒットを記録したインド映画『バーフバリ』や『チェイス!』、『バルフィ!人生に唄えば』等、インド映画の映像翻訳を多数手掛けており、フリーランスの翻訳者として第一線で活躍されています。
その藤井さんに『ポロス~古代インド英雄伝~』の見どころはもちろん、子育てと仕事を両立するコツ、フリーランスでの仕事をつづけながら育児をする上で大切にしていることについてもお話を伺いました。

日々の仕事や子育てに悩んでいるという方は、ぜひ藤井さんの仕事術をチェックしてみてください!

『ポロス~古代インド英雄伝~』

© One Life Studios Pvt. Ltd.

「ポロス~古代インド英雄伝~」シーズン1

あらすじ “舞台は紀元前350年、”黄金の鳥”と呼ばれ栄華を極めた古代インド。物語はインド・パウラヴァ国のバムニ王とアヌスヤ妃の子であるポロスと、ギリシャのフィリッポス王とオリュンピアス妃の子であるアレクサンドロスの誕生から始まる。ポロスとアレクサンドロスは同じ日に生を受けたが、全く異なる育ち方をした。1人は最強の世界征服者となり、もう1人はインドで最も偉大な守護者となる運命を背負っていたのだー。”
配信スケジュール Hulu(フール―)にて独占配信中
毎週月曜~金曜12:00に新エピソード追加

『ポロス~古代インド英雄伝~』字幕翻訳者 藤井美佳さん

『ポロス~古代インド英雄伝~』字幕翻訳者藤井美佳さん

高校時代に1年間カリフォルニア州の公立高校へ交換留学。東京外国語大学外国語学部南・西アジア過程ヒンディー語専攻卒業。大学在学中から翻訳学校に通い、卒業後フリーランスとして字幕翻訳の仕事を始める。現在は、映画やドラマを中心に英語・ヒンディー語の字幕翻訳者として活躍中。
主な作品: 『バーフバリ』シリーズ、『ガリーボーイ』(2019年10月18日公開予定)、『チェイス!』、『バルフィ!人生に唄えば』、『ガンジスに還る』、『マガディーラ』他

Interview

藤井さんは第一線で活躍する映像翻訳者として、子育てと翻訳業(フリーランス・在宅ワーク)を両立されていますが、産前産後はどのようにお仕事をされていたのでしょうか?フリーランスという働き方ならではの苦労があれば、教えてください。

私は翻訳の仕事を始めて20年くらいになるのですが、子どもを産む前から翻訳者として働いていました。
会社員ではなく、フリーランスという働き方を選んだので、産後だからといって何カ月も仕事を休んでしまったら次の仕事の依頼がなくなってしまうかもしれません。
フリーランスとして活躍する翻訳者はとても多いので、いつでも他の方に取って代わられてしまうという不安がありました

その不安もあり、出産後2ヵ月で仕事に復帰したんです。出産後は軽い躁状態になっていて、とてもパワフル。そんな状態だったので、産後2ヵ月でも子育てをしながらバリバリ仕事ができてしまいました。

産後の身体を休めずに酷使したのは、良くないことだとわかっていました。その後の健康にも影響しましたし…。
ただそれよりも、復帰できるのかという不安の方が大きかったんです。

フリーランスで子供を産むということは、ある程度覚悟を決めなくてはならないのだと思います
出産や育児をきっかけにフリーランスに転向する場合は、フリーランスになるタイミングや、育児と仕事の両立の仕方を前もって考えることができます。
ですが、初めからフリーランスとして働いていて、その通過点として子供を産むのはとても難しいことです。

私の場合、働き続けるには、当時は無理をするしかありませんでした。ただこれが良いことだとは思いません。もう少し社会全体で考え、改善していく必要があると思いますね。

フリーランスとしての仕事を継続するのは本当に大変ということですね。藤井さんは仕事を辞めようと思ったことはなかったのでしょうか?また現在まで仕事を継続できている秘訣は何でしょうか?

お世話になった助産師さんに「今はつらくても仕事は辞めないほうがいい」と言われたんです。フリーランスとしての働き方を確立し、仕事がつらくなくなるまでには10年かかりましたが、今では助産師さんの言葉の意味がよくわかります。

子どもは子どもで、自分の人生を生きています。子育てをするのは親ですが、親も親で、一人の人間として自分の人生を生きている

もし子どものためだけを理由に、自分が本当にやりたいと思っている仕事を辞めてしまったら、自分の人生が子ども本位になってしまいます。そうして、子育てが無くなっちゃったら人生やることがなくなって悲しくなっちゃうっていうのは良くないなと思って。
自分の人生に自信を持てなくなってしまうと思うんです。

大事なのは、どんな道を選ぶにせよ1回1回自分自身の意思で決断することではないでしょうか
私が仕事を継続できているのは、翻訳が本当にやりたい仕事であり、この道を自分の意思で選んだからだと思います。

どんな道を選ぶにせよ、誰かのためではなく、自分自身の意思で決断していくことが大切ということですね。藤井さんが子育てと仕事を両立させる上で、大切にしていることはありますか?

フリーランスとして在宅で働くには、仕事と育児をどちらも中途半端にやらず、うまく「切り替えること」が大切だと思っています
子どもは、仕事をしつつ中途半端に接すると機嫌が悪くなるんです。片手間に相手をされると満たされない感じがするのか、ぐずったり体調が悪くなったりすることもあり、結果的に仕事にも支障が出ます。
そのため、子どもを保育園に預けられるようになるまでは、日中は割り切って育児に専念。子どもが寝ている間に仕事を集中して片付ける、というように子育てと仕事の切り替えを大事にしていました。

また、「大変だったら迷わず助けを求める」「使えるサービスは使う」ということも、フリーランスとして働きながら子育てをするうえで重要なことだと思います
うちは夫婦ともに土日が休みではない仕事をしていて、祖父母のヘルプもありませんでした。
そんな中で子育てに取り組んでいるので、保育園や一時預かりサービスなど、使えるものは使って、子どもにかかるお金は惜しまないようにしています。

フリーランスとして働きながら子育てするには、一人で抱え込まないこと。
カウンセリング、保育園、パートナー、友達、親など…。なんでも良いので、自分に合う方法を見つけ、積極的に頼ることも大切だと思います。

今回、全299話、総製作費81億円とそのスケールの大きさでも話題のインドドラマ『ポロス~古代インド英雄伝~』の映像翻訳を担当されていますが、本当に大変だったのではないでしょうか?子育てしながらお仕事をされていた中で、印象的なエピソードはありますか?

『ポロス~古代インド英雄伝~』の翻訳時は、娘(※当時小学5年生)が勉強をしている側で、一緒に仕事をしていました。
『ポロス~古代インド英雄伝~』は全299話という壮大なスケールの作品なので、私の方はなかなか作業が終わらず…。先に宿題を終わらせた娘に「まだやってるの?」と言われてしまうことも。

© One Life Studios Pvt. Ltd.

娘も大きくなり、映画を一緒に見るようになってきたので、私の仕事がどんなものなのかわかってきたみたいです。

先日、翻訳を担当した映画を一緒に観に行ったのですが、エンドロールに私の名前が出た際に、「名前出たよね…!みんな知ってるのかな?」と娘が嬉しそうにしていたのを見て、私も何だか嬉しくなりました

娘さんが翻訳の仕事を理解し、誇りに思ってくれる。それは「働くママ」冥利につきますね。藤井さんは翻訳者として、すでに様々な目標を達成されていると思いますが、今後の目標やビジョンを教えてください。

これからも、翻訳者として必要とされる限りは仕事を続けたいですね。そして、自分を育ててくれたインド映画を通じて、社会に何か還元していきたいと思っています

たとえば、母校の東京外国語大学では、「TUFS Cinema」という活動をおこなっていて、2015年から無料上映会に取り組んでいます。「TUFS Cinema」では、世界で評価されているものの、興行的に難しく日本で上映されていなかった映画を主に取り上げて、字幕を付けて上映しているんです。

私はヒンディー語を大学で学び、インド映画の翻訳に携わるなかで、インド映画に救われたことが何度もありました。今度は私がインド映画に恩返しできればと思っています。

インド映画を通して、社会の役に立つことに取り組んでいきたいですね。

最後に、子育てと仕事に日々頑張っている『働くママ プラス』の読者へ、のメッセージをいただけますでしょうか?

仕事をしながら子育てしていくには、一人で抱え込まないことが大切です。大変だと思ったら、迷わず周囲に助けを求めるべきだと思います。

友達、パートナー、カウンセリング、民間サービス、何でもいいので、自分が頼れるものを見つけ、思い切って頼ってみる。これは、フリーランスで働きながら子育てをするうえではとても重要なことです。

子育ては、仕事だけでは得られない貴重な経験をさせてもらっているなと思います。子どもはお金では買えない、代えがたい存在です。
大変なことも多いですが、貴重な経験ができている今を大切に、子育てを楽しみたいですね。

子育てと仕事の両立はなかなか難しいものがあり、私自身うまくやれてはいないこともたくさんあります。ですが、たとえ効率よく両立できなくても、自分自身で決断したことですし、子育ても仕事も自分の人生ですから。試行錯誤しながらやっていくことが大切だと思っています

こんな私の経験が、何か少しでも仕事と子育てを頑張る働くママの力になれたら幸いです。

Written By 西山 沙輝

『ポロス~古代インド英雄伝~』

© One Life Studios Pvt. Ltd.

「ポロス~古代インド英雄伝~」シーズン1

あらすじ “舞台は紀元前350年、”黄金の鳥”と呼ばれ栄華を極めた古代インド。物語はインド・パウラヴァ国のバムニ王とアヌスヤ妃の子であるポロスと、ギリシャのフィリッポス王とオリュンピアス妃の子であるアレクサンドロスの誕生から始まる。ポロスとアレクサンドロスは同じ日に生を受けたが、全く異なる育ち方をした。1人は最強の世界征服者となり、もう1人はインドで最も偉大な守護者となる運命を背負っていたのだー。”
配信スケジュール Hulu(フール―)にて独占配信中
毎週月曜~金曜12:00に新エピソード追加

作品の見どころ

藤井さんインドドラマやインド映画は、インドのみを舞台にしたものが多いなかで、『ポロス』は、ギリシャを含め、世界地図の中の一つとして広い範囲からインドを描いている、珍しい作品です
アレクサンドロス大王とポロスの対比を中心に描かれており、歴史上の有名な出来事(史実)とともに語られるので、ストーリーがわかりやすい点も大きな魅力。
全299話と壮大なスケールで描かれながらも、次はどうなるのか?と飽きさせないドキドキ感があります。

© One Life Studios Pvt. Ltd.

また、女性の描きかたが工夫されていて、『ポロス』の物語を通して現在の問題を語っている点も新鮮です。
『ポロス』の世界では、「物言う母」「強い女性」が魅力的に描かれています。女性が活躍する物語でもあるので、働くママの読者の方も勇気をもらえる作品です