非認知能力を伸ばす教育を進めている学校はどれくらいある?
「非認知能力(noncognitive skills)」とは、子供の学びに欠かせない能力のうち「目標に向けて粘り強く取り組む力」や「他者と協力する力」「自己肯定感・自分の情動を制御する力」といった学力テストでは測りにくい能力を指します。
最近の研究では、大人になった後、社会的・経済的に成功する上で「認知能力(cognitive skills:知識や技能、思考力、計算力など)」と共に、この非認知能力が重要な役割を果たしていることがわかっており、教育現場でも非認知能力を育むための取り組みが注目を集めています。
学力をはじめとした「認知能力」は、義務教育と高等教育を通じた学びの道筋がある程度はっきりしており、今までの蓄積も豊富にあります。 その一方で、最近になって重要性がクローズアップされてきた「非認知能力」に関しては、学校やフリースクール等でどのような取り組みがされているかがあまり知られていません。
そこで今回は非認知能力を伸ばす取り組みをおこなっている学校やフリースクールにスポットを当て、それぞれの教育現場における具体的な取り組みを解説します。
子供に非認知能力を育んでほしいと考えている保護者の方は、学校や放課後教室を選ぶ際の参考にしてください。
目次
非認知能力を伸ばす私立小中学校の取り組み
私立の小中学校では、それぞれの教育理念に基づく独自の学習や課外活動をおこなっている点が大きな特徴です。非認知能力を伸ばす教育についても、最近スタートした公立小中学校と比較すると、いち早く学習カリキュラムや学校行事に組み込んでいる学校が多く、そのための設備や学習ツールも充実しています。
学力や偏差値だけでは評価できない、子供の主体性や自己肯定感、協調性なども重視した、いわば「認知能力と非認知能力の融合的な教育」を実践している学校であれば、学びの中で自然と非認知能力を高めていくことができるでしょう。
以下に非認知能力を伸ばす教育に力を入れている私立小中学校の取り組み事例を紹介します。
昭和女子大学附属昭和小学校
東京都世田谷区にある男女共学の私立小学校。児童の主体性を育む教育方針を展開している。
こども園から大学院までが揃う私立一貫校の特徴を活かして、園児や中高生など多年齢の児童・生徒と交流する機会が多い。また、学園が所有する研修施設や寮での宿泊体験・行事などを通じて、協調性、粘り強さ、判断力、行動力といった幅広い非認知能力の育成を目指す。
住所
- 東京都世⽥⾕区太⼦堂1-7-57
学校タイプ
- 私立小学校(男女共学)
海陽中等教育学校
愛知県蒲郡市海陽町にある私立の全寮制・中高一貫男子校。経営元の海陽学園は、トヨタ自動車・JR東海・中部電力など80社以上が出資し、次世代人材を育成する目的で設立した学校法人で、基礎学力と人間力を磨くことを教育理念としている。
非認知能力の修養にも力を入れており、宇宙飛行士の訓練ノウハウを活用した「非認知能力可視化・育成ツール」をカリキュラムとして導入。生徒が自分の行動や能力について定期的に振り返りや評価をおこなっている。
住所
- 愛知県蒲郡市海陽町3丁目12番地1
学校タイプ
- 私立中高一貫校(全寮制・男子校)
桐蔭学園小学校
神奈川県横浜市青葉区にある男女共学の私立小学校。他に、幼稚園・中等教育学校・高等学校・大学・大学院を擁しており、学園理念である「自ら考え 判断し 行動できる」人材の育成を、一貫教育を通じておこなっている。
小学校と幼稚園では、特に幼少期に伸びるとされる非認知能力の修養に積極的。自分の考えを持ち、それを伝え合うことや、学園内の自然環境に触れる活動などを推奨している。
住所
- 神奈川県横浜市青葉区鉄町1614
学校タイプ
- 私立小学校(男女共学)
非認知能力を伸ばすフリースクールの取り組み
非認知能力を伸ばす試みは、私立・公立の小中学校に加え、フリースクールでも実践されています。
フリースクールとは、何らかの理由で学校に通えない子供たちが通う学習施設や居場所のこと。主に民間の企業や団体によって運営されており、子供の学習進度に応じた学習サポートや運動・レクリエーションなどの体験活動を提供しています。
スクールの規模や活動内容は、フリースクールごとに異なりますが、学習の支援に加えて、自分で計画を立てて勉強する力や、周囲の大人・子供とコミュニケーションを取る力など、非認知能力を学ぶ機会も豊富。
フリースクールの中には、特に非認知能力を伸ばすことに重点を置いたカリキュラムを実施しているところも少なくありません。
SOZOWスクール小中等部
2023年11月に開校したオンラインのフリースクール。自己肯定感を育む「自分探Qコース」、好きな活動(音楽やゲーム、イラストetc.)を通じて仲間とつながる「好き探Qコース」、自分で設定したプロジェクト活動をメインにおこなう「未来探Qコース」の3コースを提供している。
子供が自信や安心を育み、社会で生きる力を身につけることを教育方針に、さまざまなカリキュラムを提供する一方で、柔軟性の高い教育システムを用意。メンタースタッフとのコミュニケーションやオンラインキャンパスへの通学は、曜日や頻度を自由に設定できる。
不登校の出席認定制度にも対応(取得率75%)。
入学金(税込)
- 19,800円
料金(税込)
- 月額料金
- 自分探Qコース……25,000円
- 好き探Qコース……33,000円
- 未来探Qコース……40,700円
主なコース
- 【自分探Qコース】※対象:小4〜中3
- メンタースタッフとマンツーマンが中心。オンラインで子供の声を傾聴し受け止めることで自己肯定感を育む。子供同士の関わりは少なめ。
主なコース
- 【好き探Qコース】※対象:小4〜中3
- メンタースタッフとのマンツーマンのやり取りに加え、仲間との活動をメインでおこなう。ゲームやイラスト、楽曲制作など自分の好きな分野で共同作業をすることで、自己・他者理解を育む。
- 【未来探Qコース】※入学時選択不可・中学以上推奨
- 好奇心と個性を深める活動が中心。自分の好きな分野でプロフェッショナルなど大人のコーチングも受けつつ、子供発信のプロジェクトを進行する。
非認知能力を育める通信教育
実は、数ある通信教育のなかには、非認知能力を育めるものがあります。家庭での学習を通して子どもの非認知能力を高めたい場合、非認知能力を育める通信教材を利用するのもおすすめです。
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非認知能力を伸ばすSELを使った取り組み
非認知能力を伸ばす取り組みを進める際の指針の一つとして注目されているのが、「SEL(Social Emotional Learning)」です。
SELは、欧米の教育現場で実践され、日本にも導入された児童・生徒の社会性の発達を支援するプログラムで、日本語に訳すと「社会性と情動の学習」という意味です。
2022年改訂の「生徒指導提要」には、児童・生徒が抱える「集団になじめない」といった人間関係の悩みや、学習面・心理面・進路面での不安に対応する手段の一つとして記載されました。
SELの定義
自己の捉え方と他者との関わり方を基盤として、社会性(対人関係)に関するスキル、態度、価値観を身につける学習であり、社会性と情動に関する心理教育プログラムの総称
SELで育成を目指す社会的能力
| 1. | 自己への気づき |
|---|---|
| 2. | 他者への気づき |
| 3. | 自己のコントロール |
| 4. | 対人関係 |
| 5. | 責任ある意思決定 |
| 6. | 生活上の問題防止のスキル |
| 7. | 人生の重要事態に対処する能力 |
| 8. | 積極的、貢献的な奉仕活動 |
参考SELを日本に初めて紹介した名誉教授に聞く!これからの学校教育に欠かせない社会性と情動の学習「Social and Emotional Learning」とは?
非認知能力を高めるオンライン型のSEL教材も
SELには特定の決まった学習方法や実践方法はなく、本場のアメリカ・欧州はもちろん、日本でも様々な教育プログラムが存在します。
たとえば、日本文化教育推進機構では、SELのサポートとなるデジタル教育プログラム「みらいグロース」を開発し、全国の教育委員会・小学校の協力のもと実証研究をおこなっています。
千葉県木更津市・習志野市教育委員会との実証研究
木更津市・習志野市の小学校各2校、計4校で「みらいグロース」を実施したところ、社会情動的スキルの得点が、プログラムを実施した群のみ、統計的に有意に向上。
神奈川県秦野市教育委員会とのモニタリング実施
2023年度に5校、2024年度に7校の小学校で「みらいグロース」を実践し、「長所・短所の自覚」「感情の気づき」「目標のマネジメント」「学びの管理」「責任ある意思決定」などの向上が統計的に優位に向上。
参考子どもの非認知能力を伸ばすSEL教材「みらいグロース」神奈川県秦野市内小学校との実証研究を報告! | 一般社団法人日本文化教育推進機構のプレスリリース
みらいグロース
自分の感情・状態を自覚する「グロースアセスメント」と、集中力や思考力・感情調整力を養う「トレーニング」を組み合わせたオンライン教材。トレーニングをこなすことで、自己理解や感情のコントロール、他者への共感力などの育成を目的としている。
家庭での利用が可能で、受講料は月額4,980円(税込)、標準受講期間は3か月程度となる。無料体験はないが、公式サイト上でみらいグロースのお試し動画を視聴可能。
受講料(税込)
- 4,980円
標準受講期間
- 3か月程度
偏差値や進学実績だけではなく、非認知能力も学校や教材選びの重要な基準に
数値として表すことが難しい非認知能力は、従来の教育では見過ごされがちでしたが、近年は様々な研究の結果からその重要性が認識されています。
非認知能力を伸ばす教育にいち早く取り組んできた私立校に加えて、現在は公立の小中学校でも子供の自発性や協調性に着目した授業を進めるところが増えてきました。
また、不登校の児童・生徒が増加する中で、フリースクールや通信教育でも非認知能力を養うカリキュラム、プログラムを提供し、受講できるようになっています。
数値化できない能力を高めるには、偏差値や進学実績だけでなく、非認知能力への取り組みという視点でも学校や教材をチェックし、子供に必要な能力が伸ばせるところを選ぶようにしましょう。